INUZUKA Laboratory @ Nagoya Univ.

―「わかった」などと思いたくない.「わからないこと」を思い切り楽しみたい―

合同演習の参加ルール(見学自由.現在はオンラインで開催しています)



研究室概要(大学院): The outline of our laboratory (graduate school):

高度な研究の遂行を通して,組織現象に関する正しい理解を支援します.当研究室の所属ゼミ生は,何らかの実証的研究に取り組んでいただきます(文献資料だけに基づく理論研究は取り扱いません).研究の遂行にあたっては,学術的知識のみならず,現場からデータを収集する実践力も必要となります.なお,研究テーマについては,経営学の実証研究であれば特に問いません(指導教員の専門領域は,知識マネジメントや経営組織論ですが,経営戦略,テクノロジー・マネジメント(技術経営),サービス・マネジメント,組織行動論,人的資源管理等の幅広い研究領域を扱うことができます).
I'm ready to assist students better understand organizational phenomena through completing well-grounded research. I require all laboratory members to take part in empirical research (I do not accept any theoretical works such as summarizing books). In line with this, members are required to possess not only academic knowledge but also perseverance in collecting data in their respective research field. I basically do not intervene with the member's research theme as long as it is in management (Though my specialization is knowledge management or organization management, I can cover a wide range of research areas including corporate strategy, technology management, service management, organizational behavior, human resource management, etc).

主指導の学生には,原則として外部報告(学会報告や学術雑誌への発表)を目指してもらいます.また,博士課程の学生に対しては,国際ジャーナルへの掲載を視野に入れた,世界レベルで通用する研究手法,理論的な洞察,ディフェンスの方法等を教授します.
I will be expecting each regular member to present his/her research work outside the university (i.e., publication in journals or oral presentations in academic societies). For doctoral students, I also provide research methods, theoretical insights and tips on how to get approvals for publication in international journals.


※当研究室を志望する諸君へ: To those aspiring to become members of our laboratory:

大学院は,勉強をする場所ではありません.研究をするところです.ゼミ生(研究生を含む)は,合格後すぐにゼミメンバーとなり,自身の研究に取り組んでいただきます(必要であれば入学前に研究指導もします).そのため,ゼミ生の受け入れにあたっては,@研究を始める準備がどこまで済んでいるか(既に始めているか),A研究対象から実証データを確実に入手できるか,B研究を最後まで遂行できる能力と意欲を有しているかという主に3つの観点から判断します.実証研究しか扱わない研究室のため,データ入手の確実性は,特に重要な判断材料になります(大学や研究室が,学生に調査先を紹介することはありません.したがって,留学生が日本企業を対象にアンケート調査やインタビューを実施することはほぼ不可能です.自国であっても,会社から事前了解を得ていない限り難しいでしょう.これらの問題が解決できていない実現不可能な研究計画は,原則として全てお断りしています.これまで受け入れた留学生は,白書・特許・口コミ情報等のパブリックデータを利用した入念な研究計画を用意していました.残念ですが,これが海外で研究をすることの現実です).研究室への受け入れについて問い合わせをしたい場合は,上記3点について判断ができるような研究計画書(または研究報告書)を提出してください.
I believe that graduate schools is a place for conducting research work and not just for studying. Successful applicants (including research students) should participate our seminar and begin their research work at once (I'll volunteer to teach before the admission, if necessary). To do so, I assess each applicant's eligibility based on the following: (1) the applicant's readiness to start the research work, (2) whether the applicant has solid accessibility to data of the targeted company or industry, (3) the extent of the applicant's ability and intention to carry out the work. Above all, accessibility to data is the very essential requirement as our laboratory only deals with empirical works (We do not help students access research sites. It should be stressed that conducting surveys or intervews targeting at Japanese companies is almost impossible for foriegn students unless you had already gotten a solid approval from a targeted company. I basically reject all these unfeasible plans. Successful forign applicants had prepared a well-grounded research proposal by appling public data such as white papers, patents, eWOMs. This is the sad reality of studing abroad). To determine whether an applicant is qualified or not, he/she is required to submit a research proposal (or a research report you have written) that satisfies the requirements mentioned above.

単なる勉学・進学(留学)目的の者は,本学学部などへ再入学(編入学)し,基礎知識を固めた後に,改めて当研究室を志してください.十分な知識をもたずに大学院に進学しても,確かなスキルや思考が身に付かず,結果として労力,時間,学費を損じるだけに終わります(指導教員自身も,大学院進学の前に,大学で学部を3つ卒業しています).同様の理由により,研究計画が特に具体的でない限り,研究生は受け入れません(研究生という制度は,研究をする人のためのものです.大学院進学に向けた予備校としての機能は提供していません.必要なものは研究計画書ですので,履歴書や成績証明書は送ってこないでください.研究計画書のないメールはすべて無視します).研究計画書について相談がある場合は,本ページ上部に記載した合同演習に参加してください.
Students who just plan to study abroad or pursue higher education should enroll in another undergraduate course to broaden their knowledge in advance. Lack of the basic knowledge limits your development of skill and perspective, resulting in wasted effort, time and money (I, for one, had had three bachelor's degrees before entering a graduate school). For this reason, our laboratory does not accept research students unless they have a very feasible research proposal (By research students, I mean those who are still completing requirements to do a research. We do not provide functions as a pre-school in order to enroll our graduate school. You better not send your resume or transcript because all I need is a reserch proposal. All the mails without a solid research proposal will be ignored). If you need a consultation with your research proposal, consider attending our joint seminar mentioned on the top of this page.


社会人で当研究室を目指す方へ

実務経験を通じた強い問題意識をもった社会人(3年以上の実務経験を有し,実務を通じたデータへのアクセシビリティをもっていること),または研究室の推進するテーマ(現在は,サービス・マネジメント)を支援できる技能やデータを有する者については,基礎知識なしにゼミ生として受け入れる用意があります.上記条件に適う(と思う)方で当研究室を志望する者は,事前にご相談ください.社会人学生に対する研究指導は,原則として金曜夜間に行います.大学院生が困難な方は,所属企業との共同研究を前提に研究生として受け入れます.

大学院ですので,修士論文は書いていただく必要があります.社会人にとって論文を書くことの意味は,『自分の酔いに気づく』ことにあると私は思います.私自身のことになりますが,会社員だった頃は「上司はもっと○○すべきだ」「△△もできないような会社に未来はない」などと自分の立場で<意見>を主張していました.しかし,いざそれを論文にしようとすると,何も書けない自分に気づきました.先行研究をまとめているうち,それまで正しいと信じていた<意見>には副作用があり,実はそれほど正しくはなかったことがわかってきたのです.学術論文を書くことは,自分の意見に反事例がないかをひとつひとつ確認していくということです.その過程で,偏りのない正しい論理(論理思考)が身に付きます.

社会人は研究に興味がないのだからと,一部のMBAでは修士論文の執筆を学生に課していないようです.私は大変不幸なことだと思います.これは個人的見解ですが,いわゆるMBA的な教育(社会人が集まってわいわい議論するイメージ)では反事例を探す機能が弱く,「みんなに俺の気持ちを受け止めてもらえた.やっぱり俺の意見は正しいんだ」と自分の意見を強化して修了する人が少なくないように思います.どれだけ議論しても,反事例を跳ね返す力がなければ,その論理はお粗末なままです.「俺はMBAをもっているから,俺の考えていることは正しいんだ」と思う上司の部下にあなたがなったらどんな気持ちになるかを考えれば,正しい論理を作ることがいかに重要であるかがおわかりいただけるだろうと思います.

注:社会人学生の受け入れ方針の変更について(2023年度受け入れ学生より)
実務を経験した教員として,社会人学生は歓迎してきたところですが,現実には中学高校レベルの学力を欠き指導内容がまるで理解できない者,3年以上かかることを理解して入学したにも拘わらず,入学後になって「2年で修了できないのは指導教員が無責任だからだ」と騒ぐ者(どっちが無責任なんでしょうか),週に1日どころか半年に1日の学びすら確保できない者(仕事が忙しいんだそうです),極めつきは指導教員に内緒で修士論文を提出した者(!)までいたのが現実で,「社会人だから常識的な振る舞いができる」という前提をおくことはもうやめました(これらの学生は当然,残念な結果に終わりました).入試の面接だけではこれらのことは判断できませんので,当研究室では原則として,修士進学希望者は最低3回(半年),博士進学希望者は最低6回(1年),合同演習に参加しながら研究を進め,社会人学生としての適性があることを確認した上で入試に臨んでいただく方針に切り替えました.当研究室の所属を希望する者はできるだけ早く合同演習(詳しくは,本ページ上部のリンクを参照ください)に参加し,自らの研究を始めるようにしてください(修士課程への進学希望者には,1年目の最初に予定されている「予備調査」を始めていただきます.合同演習時のみに限りますが,研究指導も行います).




研究室メンバー

博士後期課程 (Doctoral Students)
Lijing CHANG (Ms, regular) from China / 2019.7-
  • [RP] Leadership style of customers in service settings
      ※2020 AIBSEAR HK Conference ほかで研究発表をしました!

  • 博士前期課程 (Master's Students)
    Yang BIAN (Ms, regular) from China / 2021.4-
  • [RP] Quantifying service integration
  • Chao LIANG (Mr, regular) from China / 2020.4-2022.3 [graduated]
  • [RP] Moderate effect of organizational slack on the relationship between ambidexterity and performance
  • Xiao Feng XIE (Mr, regular) from China / 2018.4-2020.3 [graduated]
  • [RP] Indirect network effect in game soft indsutry
      ※SIBR 2020 Sydney Conference で研究発表をしました!
  • Koichi MIZUNO (Mr, business) from Japan / 2017.4-2019.3 [graduated]
  • [RP] Process of leadership emergence in dance circles

  • 研究生 (Research Students)
    N/A(受け入れておりません)

    交換留学生 (Exchange/NUPACE Students)
    Luna Jade, SAVIGNY (Ms) from France (Universite de Paris, France) / 2022.4-2022.8
    Nathan, LEMOS (Mr) from France (Universite Lyon III - Jean Moulin, France) / 2021.9-2022.8
    Asa Elinor, LARSON (Ms) from USA (University of Cincinnati, USA) / 2019.9-2020.8
    Xiao Ling, WANG (Ms) from China (Sun Yat-sen University, China) / 2018.4-2018.9
    Valentin, ZIELLENBACH (Mr) from Germany (Technische Universitat Chemnitz, Germany) / 2016.9-2017.8
    Bui-ka, MA (Ms) from China (The University of Hong Kong, China) / 2016.4-2016.9
    Huei-Ju, WEI (Ms) from Taiwan (Sun Yat-Sen University, China) / 2015.9-2016.8
    Dorine, SIMO (Ms) from Gabon (Universite Jean Moulin-Leon III, France) / 2014.10-2015.3






    研究計画書は,一流を目指す人の羅針盤 〜The importance of preparing a research plan〜

    大学院教育が多様化し,いろいろなバックグラウンドをもった学生が大学院を目指してくるのは良いことだと思います.しかし,そのお陰で指導に困難を覚える学生に出会う機会も増えました.ここではそうした学生たちを,「困ったちゃん」と呼ぶことにします.

    困ったちゃんが”困った”である所以の筆頭は,大学院を研究をする場所として位置付けていないことです.それは,面接時に受験生が述べる「経営学にとても関心がある」「基礎から体系的に学びたい」「自分の実務経験を学問的に整理したい」などといった言葉に代表されます.これらは,大学院を目指す理由たり得ません.そもそも,大学院に入りたいという人が「経営学にとても関心がある」のは当然のことでしょう.本当に関心があるならとっくにいろいろ調べあげているはずですから,もっと具体的に,経営学理論の何にどのような関心があるかが言えなければおかしいです.本屋に行けば,基礎から体系的に整理された優れた本がたくさん並んでいます.それなのに,「基礎から体系的に学びたい(教えてもらいたい)」とはどういうことでしょう(そもそも,大学院は,基礎ではなく応用を扱うところです.基礎を教わりたい人はどうか学部へ行ってください).「自分の実務経験を学問的に整理したい」も同様です.そんなにしたいならどうぞやってください,独りでできますよ,と言いたいくらいです.大学院ではもちろん勉強もしてもらいますが,それは研究をするための勉強であって,ほとんどの時間は研究に費やされることになります.大学院に進学する以上,勉強(インプット)から研究(アウトプット))へと頭を切り替えてください.

    困ったちゃんのもうひとつのタイプは,「研究は自分で主体的にするもの」ということがわかっていない人たちです.この手の学生は,自分自身の頭を使わず,指導教員の頭を使って研究を進めようとします.研究テーマを決める際も決まって,『○○について研究したいのですが,先生からアドバイスをください』とノープラン作戦でやってくるので,『では,研究を始めてください(私はあなたの研究代行者ではない)』と”アドバイス”することにしています.『○○ということについて調べたところ,△△という理論があることがわかった.これについては,先行研究で既に□□ということがわかっている.自分はこのうち,××という点については疑問に思った.なぜなら,自分の経験では◎◎ということをよく経験したからである.そこで,私は◎◎という現象を,▲▲という視点から研究したいと思う.自分が勤める会社の社員であれば調査に協力してもらえるはずなので,うちの社員を研究対象に考えている.◆◆という分析手法があるようなのでそれを使って検証すれば,自分が抱える疑問は明らかになるのではないかと思う』とまで言えて初めて教員は,『君はまだ調べきれていないようだが,君の関心事は既に◇◇という学者が調べている.まずはこの人の論文を調べてみなさい.それに,◆◆という分析手法は,この研究には適さないのではないかと思う.他のアプローチも検討してみなさい.たとえば,■■などがある』とアドバイスができます.有益なアドバイスをもらいたいのであれば,まずはそれを受け取る準備を終えてから来てもらいたいものです.

    最後の困ったちゃんは,研究ができなかった言い訳を並べるタイプです.「仕事が忙しかった.病気にもなったし,時間が取れず研究が思うように進まなかった.でも,他の単位は取ったのだし,学費も払ったのだから卒業させろ」と,就学期間終了間際になってバタバタ騒ぐ学生です.これではまるで,「おもちゃ買って〜」と駄々をこねる子供です.まず,「仕事が忙しい」ということは承知の上で,大学院に入学したのでしょう?.世の中には,あなたより忙しくても,細切れの時間を上手につないで論文を仕上げられる社会人学生が山ほどいます.それに,病気になってしまったのなら,病気を治してから論文を書いて卒業するしかないでしょう.どんな理由であれ,研究論文を一定レベルで仕上げられなければ卒業できないということは,入学前にわかっていたはずです.これを読んでいる人は,こんな低レベルな大学院生などいるはずがないとお思いになるかもしれませんが,こうしたお子ちゃま学生は大学には案外多いのです(大抵は,自分は有能だと勘違いしているプライドが高い学生です.こうした人たちは本能的に,本当に有能な人たちと比較される場を避け,「条件さえ整えば自分だってできたはずだ」と,自分を正当化するための屁理屈を主張し始めます).

    困ったちゃんであるか否かを入試段階で判断する最も重要な手掛かりが,研究計画書です.なぜならそれを読めば,「経営学にとても関心がある」「基礎から体系的に学びたい」「自分の実務経験を学問的に整理したい」などといった研究の準備段階から,どの程度<卒業できているか>がわかるからです.計画ができているということは,準備を終えているということです.特に,学問から遠ざかっている社会人の場合,急ぐ必要はないはずですから,現役院生の研究発表を参考にした上で,研究とはどういうものであるか,大学院では何をどこまで求められるのかのイメージを掴み,1年くらいかけて自身の研究計画をじっくりと固めてから受験に臨まれることを強く希望いたします(当研究室ではそのために合同演習を一般の人にも開放しており,毎回多くの”候補生”が参加されます.詳しくはこのページの上部リンクをご覧ください).私は趣味でランニングをしますが,素人からみて,学部の卒業論文の執筆は10キロマラソン,修士論文はハーフマラソン,博士論文はフルマラソンに相当します.ハーフマラソンを走り切る(修士号を取得する)ためには,10キロ程度は自力で走れる基礎体力(学部程度の基礎知識)が必要です.社会人はスタートさえしてしまえば何とかなるはずだと”瞬発力”で受験を決める人が多いですが,それはまるで練習を一切しないままマラソン大会に出場するようなものです.どんなに熱烈な応援を受けたところで(指導教員から厚い指導を受けたところで),本人に基礎体力がなければ制限時間内での完走はできません.自信をもつのは結構ですが,過信は禁物です.

    実務経験をもつ教員として,こうした準備が困難であることはわかっているつもりです.しかし,あなたの問題意識が本物なら,不可能ではないとも同時に感じています.それに,実際の研究はこうした地味な作業の繰り返しですから,こうした準備が『面倒だ』と感じてしまうのであれば,大学院に来ても不幸になるだけです(大学院とは,こうした準備が『楽しい』と思える人たちのための場です).私は東京などで第一線のビジネスパーソン(一流企業のエグゼクティブ)をよく指導しますが,彼らは普段からよく勉強しているし,そのため問題意識も極めて明確です.あくまで総論ですが,私は一流の論理を作れる人の周りに,良い仕事が集まってくると感じます.人が仕事を選ぶのではなく,仕事がそれを遂行できる人を選ぶのです.大学院は,そうした正しい論理を,思考のプロたる学者の指導の下で作り上げることができる最高の場だと思います.困難を承知で大学院を目指す以上,学生は一流の教育を受ける権利がありますし,私にもそれを提供する覚悟があります.しかし,一流の教育を受けるためには,「一流の研究をするのだ」という強い意思が学ぶ側にも必要です.大学院はカルチャー・スクールではありません.少なくとも「一定レベルの研究論文を書けなければ,修了できないのだ」という覚悟をもった上で大学院を目指してください.

    その覚悟を試す格好のテストをお教えしましょう.それは,研究計画書を作るために週末に図書館に籠り,仕事をしながらの勉学生活がどういうものか疑似経験してみることです.ただ覚悟をもつことと,それを実践することの間には大きな隔たりがあることに気づくはずです.修士論文を書き上げるためには,最低でも丸100日は研究に費していただく必要があります(この100日には,授業に参加する日は含まれていません).したがって,社会人学生には,少なくとも週に1日は(有給を使ってでも)朝から晩まで研究に時間を割くことにコミットしてもらわねばなりません(そもそも,週1日すら勉学に充てられない者は学生とは呼べません).GW,盆休み,正月もすべて,勉学に充てていただきます.私自身,会社員をしながら大学(学部)に通っていた時期は,有給休暇を使って勉学時間を捻出していました.寝不足のため,電車の中で貧血になりながらも単位認定試験へ向かったこともあります.あなたの体力で本当にそんなことができるのか,(通販番組みたいで恐縮ですが)まずは4週間試してみてください.「今週は疲れたので例外的に休み」「来週は○○があるので仕方ない」等の言い訳を言い始めるようなら,二足の草鞋を履くセンスはないと思います.

    では,どうやって研究計画書を作ったらいいの?

    図書館に籠れと言われたって,研究計画書なんて書いたことがないし...という声が聞こえてきそうです.私は経営学分野で大学院を目指す前に,先に述べたように大学(学部)に入り直して卒業論文を書いていたので,それをベースに研究計画書を書きあげることができました.自分が研究に向いているかどうかを判断するには,大変乱暴な言い方ですが,自分なりに研究を始めてみるしかないと思います.さあ,何からスタートして良いかわからないのではないでしょうか.こうして<準備体操>をしてこなかった学生は,研究計画が形になるまでに1年以上を費やしてしまい,最後は時間が足りなくなってしまうのです.手掛かりが全くないのであれば,研究のプロのやり方を参考にするしかないでしょう.ネット上には,CiNii や Google Scholarという論文データベースがあるので,さまざまな(玉石混交ですが)論文がみつかります.まずはキーワードで検索し,そのうちそこに書かれた参考文献が気になって図書館からコピーを取り寄せてみる(市町村の図書館でもできます)・・・などしているうちに,気が付けばあなたは研究の世界に足を踏み入れているはずです.この過程を通じて,世の中にはあなたと同じ問題意識をもっている人が,星の数ほどいることにも気付かされるでしょう.

    世の中には,「研究計画書の書き方」なる本や,それを教えている大学院予備校もあるようですが,参考にする必要はありません.研究計画書で書かなければいけないことは決まっています.およそすべての実証研究は次のような形になっているので,それに則って考えていけば良いのです.これは全世界共通の形式です.結局,実証研究とは変数Aと変数Bの関係があるかないか,あるとすれば,その関係は正か負かを知ることです.どのようなリサーチクエスチョンがあるか,具体的にどの変数が自分の問題意識にフィットするかは,先行研究などを参考に自分で探してください.
    RQ(リサーチクエスチョン):××はどうすれば高められるか
    ・H1(仮説1):○○が高いと,××は高まる
    ・H2(仮説2):△△が低いと,××は高まる
    ・H3(仮説3):○○が高くかつ△△が低い時,××はより高まる

    上記では仮説を3つにしていますが,4つ以上あってももちろんかまいません.大切なことは,仮説をすべて検証することで,リサーチクエスチョンに答えられる(あなたの問題意識が解決する)形になっていることです.受験の時点では仮説まではできていないかもしれませんが,リサーチクエスチョンは最低限必要です.これは問題意識を述べることではありません.あなたが研究で何を知りたいのかを端的に1行で宣言することです(だらだら問題意識を述べる割には,リサーチクエスチョンがいつまでも作れない社会人が多いみたいです).仮説があれば具体的に何と何の変数の関係を知りたいのかがわかるので有難いです.

    ここまでできていれば私の関心は,上記の仮説を検証するためのデータを「どこから(where)集めるか」に移ります.実証研究を標ぼうする研究室としては,リサーチクエスチョンに答えられるデータの在り処(where),またその入手可能性(accessibility)は,特に重要な要件になりますので面接では必ず質問されると思ってください.社会人は自分の職場や個人的人脈を使ってデータを収集できるかもしれませんが,留学生はそれが使えません.学内の知り合いからアンケートを取れば,サンプル数は10か20になってしまいます(実証研究をするという観点からいえば,外国で研究することはデメリットしかありません).パブリックデータを使うのが現実的だと思いますが,そこから明らかにできる事項は限定されます.「文献から調べます」「アンケートをします」という受験生によく会いますが,これは友人と待ち合わせする時に「日本のどこかで会いましょう」と言っているようなものです.愛知県でもだめでしょう.名古屋市でもまだ広すぎです.「愛知県名古屋市千種区不老町にある名古屋大学の○○という建物の△△という部屋」と具体的に指定されれば,私としては安心できます.

    上記の準備が済んでいない人の研究計画書は,本当にお粗末です.私たちは研究のプロですから,下のようなテーマなら内容を読まずに即<却下>です.逆に研究計画書がよく出来ていれば,多少学力が劣っていても試してみたいという気持ちが生まれます(私の場合,データ入手が確実であればまず採用します).せめて研究のプロに,最後まで読んでもらえるような研究計画書を作る.それが「困ったちゃん」に陥らず,一流の教育を受けるための<準備体操>なのです.

    残念な研究テーマ パターン1:身の丈にあっていない
  • 日本のものづくりを復活させる政策を提案する(大学院に来るより,選挙に出て大臣を目指しましょう)
  • 経営者100人にインタビューをする(留学生なのにそんなコネあるの?日本人に英語でインタビュー?)
  • インターネットで,3000人のアンケートデータを統計分析する(ざっと300万円はかかるでしょうね)

    残念な研究テーマ パターン2:基礎知識がない(留学生に多い)
  • 中国の企業経営について調べてまとめる(中国企業のことを知りたいなら,中国の大学院に進学してください)
  • 日本企業の成功要因を抽出して,中国で応用できないか考える(日本のやり方は,中国では通用しないですよ)
  • ○○社の経営を文献でいろいろ調べて,なぜ成功したかをまとめる(他人が調べたことをコピーしないでね)

    残念な研究テーマ パターン3:研究でない(社会人に多い)
  • 経営者も従業員もハッピーな会社になる方法論を知りたい(宗教団体法人に変えた方が早いかな)
  • 事業を成功させる新しいビジネスモデルを提案したい(どうか,会社の仕事を大学に持ち込まないでください)
  • 当社が今後歩むべき道を,先行研究を踏まえて提言したい(その提言の正しさを検証し,論文が書けるようになるのは10年後でしょうか)

    中国からの留学生に多いのが,「ユニクロのブランド戦略について調べたい」「餃子の王将が中国でなぜ失敗したかを知りたい」といった,特定の企業を詳しく調べる類の研究計画書です.これらは,ケーススタディといって,私が学部生の卒業論文で課している内容です.言い換えると,この手の研究計画書を提出する受験生は,本学の学部相当の教育を受けていないと考えられます.

    仮に,これらのテーマで研究を進めるとしましょう.少し調べれば「餃子の王将の敗因のひとつは,中国人は焼き餃子をあまり食べないのに,焼き餃子を売ることにこだわった」ことにあるとわかるはずです.ここから抽出できる命題は,「企業は環境に適応しなければならない」というごく一般的なものです.仮に,焼き餃子が中国人に受けて,餃子の王将が繁盛したとしましょう.この場合,焼き餃子を売ったことは成功要因に変わります.すると今度は,「海外進出には,市場創造が大事である」というこれまた単純な命題しか出てきません.こんなことは,あなたが調べなくてもずっと前からわかっている経営学の常識です.したがって,これらのテーマ設定に学術的な価値はありません(餃子の王将を研究する価値がないと言っているのではありません.研究テーマの設定が悪いということです).一方で,中国に進出して成功した全ての日本の飲食業を対象にして,それを「環境適応型」と「市場創造型」に分け,この2つを分ける要因とは何かというテーマになると,途端に研究らしくなってきます.もちろん,関連する理論背景やどのようなデータが手に入りそうかは調べてもらう必要がありますが.

    おわかりいただけるでしょうか.ひとつの企業や一人の人間の振る舞いを詳細に調べただけでは,実証研究とはいえないのです(厳密にいえば,研究手法のひとつとして認められてはいます.しかし,その振る舞いが生起するメカニズムをたった一例で記述することが要求されるため大変難しく,素人にはお勧めできません).研究をするということは,学問的に明らかになっていないことに,あなたが発見した知見を付け加えるということです.企業を調べてから学問的意味を探すのではなく,学術的に分かっていないことを解明するために企業を調べるのです.そして,何かを付け加える以上,『既に何が分かっているか』は予め知っておかねばなりません.それが文献レビューの必要性です(研究対象について文献を使って調べることだと勘違いしている留学生が多いようです).口述試験では受験生のほぼ全員が「入学したら,まず文献レビューをする」と言いますが,文献レビューを終えていないということは,自分の研究が何の理論に貢献できるか(theoretical contribution)がわかっていない,言い換えると,まともな研究計画書が書けていないと自ら認めているようなものです.しなければならないことが分かっているのであれば,基本的な文献レビューは入試前に終えてほしいというのが私の本音です.下に,当研究室の学生の標準的な研究スケジュールを示しておきます.一般学生が2年間で修了したい場合,1年めの冬(就職活動に入る前)までには,ラフな結果を出しておく必要があります.1年目は授業に出て単位を取る必要もありますから,入学してからゆっくり文献レビューをしている時間はないと思ってください(同様の理由で,研究目的以外の帰国や帰省,アルバイトをしている時間もありません).また,社会人の方は,最大でも週に2日しか時間を使えないため,2年で修了するためのスケジュールはかなりタイトになっています.研究の進展は「学力×努力(時間)」で決まりますので,学力も時間もない社会人の場合,修了まで3年以上かかってしまうことがほとんどです.先にも述べたように,事前に1〜2年は演習の見学をしながら,研究計画や基礎知識の準備をしっかりした上で入学した方が,トータルでは早く修了できるはずです (社会人学生の受け入れ方針を変更しました.詳しくは,本ページ内の「社会人学生の受け入れ方針の変更について」をご覧ください.

    ◆研究スケジュール(一般学生/就職希望の場合)

    1年目
    ・4月〜5月:文献レビュー
    ・6月〜8月:調査立案・準備(第1関門,通過不可で警告)
    ・9月〜11月:調査実施
    ・12月〜2月:データ分析
    ・2月合同演習:研究結果報告(第2関門,通過不可で留年勧告)
    ・3月〜:就職活動開始

    2年目
    ・〜7月:就職活動終了
    ・8月〜9月:論文執筆
    ・10月10日:論文初稿提出期限(第3関門,通過不可で留年)
    ・10〜11月:論文修正
    ・12月上旬:修士論文中集指導日(第4関門=演習単位認定,通過不可で留年)
    ・12月10日:論文完成(1ヵ月前ルール).英文校正依頼
    ・1月上旬:修士論文提出


    ◆研究スケジュール(社会人/2年修了の場合)

    1年目
    ・4月〜5月:予備調査準備
    ・6月〜7月:予備調査実施
    ・8月〜9月:予備調査分析まとめ(第1関門,通過不可で警告)
    ・10月〜2月:文献レビュー
    ・2月合同演習:研究計画報告(第2関門,通過不可で留年勧告)
    ・3月:調査準備

    2年目
    ・4月〜5月:調査実施
    ・6月〜7月:データ分析
    ・8月〜9月:論文執筆
    ・10月10日:論文初稿提出期限(第3関門,通過不可で留年)
    ・10〜11月:論文修正
    ・12月上旬:修士論文中集指導日(第4関門=演習単位認定,通過不可で留年)
    ・12月10日:論文完成(1ヵ月前ルール)
    ・1月上旬:修士論文提出

    その他,いつなくなるかはわかりませんが,幾つか参考になりそうなサイトを紹介しておきます.

  • 「残念な研究計画書」を書くための5つのポイント!?(東京大・中原淳先生)
  • 研究計画書の書き方(北陸先端大・敷田麻実先生)
  • 研究計画書(proposal)の書き方(法政大・奥西好夫先生)


    研究室訪問をする前に

    研究計画書がどうしても心配なら,研究室に訪問して志望する先生から直接アドバイスをもらうのも良いでしょう.当研究室の場合,合同演習を一般に開放していますので,そこへ参加して報告してもらっています.大学の先生はみなさんの想像以上に忙しい身ですから,十分に準備をしてから訪問しましょう(たとえば,「先生のご専門は何ですか」などと聞くのはあまりに失礼です).場合によってはメールだけで済みますので,質問したいことや研究計画書を事前にメールで送っておくのが良いと思います.また,あなたがどれだけ勉強しているかを試すため,先生からも幾つか質問があると思います.経営学で使われる言葉を偏りなく網羅するには,国家資格のひとつである中小企業診断士の「企業経営理論」という科目の勉強が役に立ちます.学部相当の知識ですが,大学院に進学したいのであれば最低限これくらいは身に付けていた方が良いでしょう.過去問題も買えますから,理解度のチェックにもなるはずです.

    研究の方法論についても,プロからアドバイスを受けるのであれば,関心のあるテーマに近い論文を読んで持参した方がよいでしょう.先生もあなたがどういうタイプの論文を書きたいのかがイメージできます(何を選んだかで,あなたの研究センスもわかります).その先生が現在何のテーマに関心をもっているかは,先生が最近出している論文を読めばわかります.私は大学院に入る前に,組織学会の『組織科学』という学術論文誌(今では私もここに論文を出しています)を,地元の大学の図書館で片っ端から読んだのを覚えています.内容はあまり理解できませんでしたが,それでも読み進めるうち「この論文はエレガントだな」「これはどうやら中身がないな」などと,素人ながらわかってきます.研究にどのようなアプローチがあるかわかるだけでもしめたものです.社会人の方で既に会社にデータはあるが(あるいはこれから収集する予定だが),それが研究にどう使えるかわからないという場合は,データのサンプルを持ってきてください.私なら喜んで話を聞きます.

    アプローチと申しましたが,研究者にはそれぞれ得意とする研究手法があります(私の場合,量的データを使った研究です).志望する先生がどんなアプローチで研究しているかは,入学後の自分の研究にも影響を与えます.特に,博士課程へ進学したい場合は,論文の掲載許可を得るために指導教員の研究能力が決定的に重要になります.日常的に研究をしていない先生に付くと,学生は自己流で研究を進めることになり,その結果何年かかっても博士号が取れないといった事態になるからです.連絡を取る前にまずは先生の業績を調べ,どれだけ多くの論文を書いているか,またどのような研究アプローチで論文を書いているかは必ずチェックしましょう(業績リストを公開していない先生は,研究能力がないダメ教授の可能性があるので要注意).これはある意味,先生の専門分野を知ることよりも重要です.なぜなら,優秀な先生は同じ研究アプローチであれば,専門分野以外の内容であっても指導ができるからです.逆に,異なった研究アプローチの場合は,専門分野内であっても指導が難しくなります.





    博士課程に進学するということ 〜 what YOU WANT to know から what WE NEED to know へ〜

    博士課程の話をしたので,博士課程と修士課程の違いについても説明しておきましょう.両者の決定的な違いは,博士課程では「外部の専門家から良いと認められた論文(原著,査読付論文,peer-reviewed article, refreed paper などという)」を刊行する必要があることです.プロの研究者を含めて,学術の世界では基本的に「外部の専門家による審査をパスした論文の数と質」によって研究能力が評価されます(たとえば,著書を出版しても,審査されていない以上,あまり評価されない傾向にあります).プロの研究者になるためには,「自分のやりたい研究をする」から,「専門家から認められる研究をする」へと切り替える必要があるのです.必然的に,研究も内向き(指導教員に気に入られること)から,外向き(学会によって認められた論文を書くこと)になります.一流の専門家による厳しい論文審査をパスしなければならず,採択率は10%を切ることも珍しくありません.審査者からは,学術的な「新規性」や「独創性」を強く求められます.なぜならそれが,この世界での貢献を示すことになるからです.

    しかし,新規性や独創性の成立要件は,研究の素人であるほどよく間違います.間違いのパターンは大きく分けて3つあります.ひとつは既に報告されている現象を,異なる母集団や対象に広げることをもって「新規だ」と主張することです.たとえば,「〇〇は日本の従業員については調べられてきたが,中国の従業員を対象にした研究はない.だからそれを調べた研究は新しい」というものです.なるほど,中国の従業員を調べた研究はなかったのかもしれません.しかし,現象の背景となるロジックや分析技法が同じであれば,母集団を変えたところで同じような結果しか出てきません.同じ結果しか期待できないのであれば,再調査する意味はありません.母集団を変えたことによってこれまで発見できなかった新たな学術的知見が期待できる場合に限って,母集団を変えて調査する意味があるのです.したがって,「○○の学術上の課題を解決するためには,中国で調べなおすことが不可欠である.それにも関わらず調べられていないので調査する」と主張できなければなりません.

    もうひとつの間違いは,「△△と□□」の関係は調べられているが,「△△と〇〇」の関係は調べられていない.だから新しいのだ,というものです.これも理屈は先と同様です.なるほど,「△△と〇〇」の関係は調べられてこなかったのかもしれません.でも,なぜその関係を調べる(私たちが知る)必要があるのでしょうか.調べられてこなかったのは,それを調べる意味(価値)が単になかっただけではないのでしょうか.このように,研究が新しいと認めてもらうためには,その関係を調べることが学術的に必要とされていることが条件となっているのです.私はゼミ生に冗談で「私は仙台に行くと決まって雨が降る.雨不足で農作物が育たない時期に私が行けば,仙台の人たちは皆喜ぶだろう.これほど重要なテーマであるにも関わらず,私が仙台に行くことと雨の関係についてはまだ誰も調べていない.私はこれを調べて論文にすべきだと思う」と言います.ゼミ生は「そんなこと,調べても意味がありません」と笑いますが,笑っている当の本人は,自分の研究が同じ間違いを犯していることに気づいていません.

    最後の間違いは,学術的なテーマへの位置づけ自体が間違っているものです.私のゼミ生ではありませんが,かつて旅館の女将をしている社会人大学院生の研究を少し指導したことがあります.その人の研究は,女将の仕事をどう後世に引き継いだらよいかという問題意識でしたが,彼女いわく「先行研究を調べたが,女将を対象にした研究はどこにもにない.だから学術的に新しい」と主張していました.確かに,女将を調査対象にした研究は,私も今まで目にしたことはありません.しかし,彼女の問題意識は,経営者の承継といった大きなテーマの中にあります.研究テーマの位置づけを「女将の研究」から「経営者の承継」に変えるだけで,先行研究は読み切れないほど出てきます.つまり,学術的には何ひとつ新しくないのです.

    これら3つのパターンの失敗の原因はすべて,「先行する研究がない」ことを新規性の拠り所にしていることです.間違いではないですが,リスクが大きいと言わざるを得ません.何故なら,同じようなことをしている論文が途中で見つかってしまったら,あなたが苦労して集めてきたデータの意義は即座に失われてしまうからです.学生の先行研究の調べ方はまだまだ甘く,そのテーマに詳しい専門家(論文を審査する先生たち)に言わせれば「先行する研究は既にある」ことがしばしばです.研究の意義を認めてもらうためには,類似する論文が仮に見つかったとしてもなお重要だといえる課題を設定するか,課題点を複数指摘した上でそれらを同時に解決する形にしておくことが安全策といえます(後者の例として,私の論文1論文2論文3をご覧ください).学術の世界では,概念の組み合わせがオリジナルであったり,誰も取り組んでいないテーマを単に追求しただけでは,学術的な貢献をしたとは認められないのです.参考までに,当研究室で使用している「プロポーサルで明らかにすべき4つの点」を下記に紹介しておきます.私の研究室では,これらの点がクリアでない博士課程進学希望者は受け入れておりません.

    The four points to be cleared for research proposals
    (1) What is the theory/concept you would like to work on?
    (2) What are the problems/gaps/voids to be solved/filled in the targeted theory/concept?
    (3) How would you like to solve/fill the identified problems/gaps/voids?
    (4) What kind of model/method/data are you trying to take?

    学生のほとんどは,上記の(2)でつまづきます.なぜなら,(2)がわかるためには,テーマに関連した膨大な(おそらくすべての)学術論文を読む力が必要となるからです(当然ですが,ほとんどは英語で書かれています).さらに,(3)や(4)を明確にするためには,調査の企画力や実践力を有しているだけでなく,様々な分析技法にも精通している必要があります.努力は必要ですが,努力すれば誰でも達成できることではありません.こうした博士号取得に伴う不確実性を削減するためにも,優秀な先生の指導下で研究することが重要なのです(研究者になりたいなら,大学名よりもはるかに重要です).研究経験の少ない学生にとって,自分が設定した学術的課題が重要であるかないかを自身で判断することは大きなリスクを伴います.また,この判断ができない(間違える)大学の先生が数多くいることは知っていてよいと思います(大抵は実力がないので,研究業績が極端に少ない.ついでにいうと,学生には優しい先生が多い).こうした研究力がない先生を指導教員にもつと,学生は自身の判断で研究を進めることになり,投稿した論文が「新規性なし」で却下されてはじめて,研究の失敗に気づくことになります.それまで研究に費やした数年間や集めたデータ,労力はすべて無駄となり,博士号を取得できずに大学を去るしかなくなります.

    したがって,他大学・他分野で修士号をもっている方であっても,当研究室での修士(博士前期)課程を経て,上記の指導を受けた上で,博士後期課程へ進学されることを強く推奨します.修士号をもっているのだとしても,経営学分野での知識や実証研究の経験を兼ね備えていなければ,上記のことを獲得するまでに数年は必要となり,博士号を取得するまでに結局5年以上かかってしまいます(研究の素人に,”ミラクル”は起きません).であれば,修士課程の段階から論文掲載を目指した研究指導をしてもらった方が,おそらく最短で博士号が出ますし,追加で修士号まで取れます.何より,「博士号が取れないかも」と焦りながら5年〜8年過ごすことに比べたら,精神的にだいぶ楽なはずです.






    番外編:私はどうやって研究を計画しているか

    優れた研究計画を作るには,2つのアプローチがあると思います.ひとつは,手に入るデータから研究計画を考えるというものです.この場合,そのデータを使って解決できる理論的問題を発見する力が必要です.もうひとつは,先行研究から入るというものです.この場合は,せっかく良い理論的問題を発見できたところで,それを検証するためのデータが入手できないことがしばしばです(先行研究を調べているうちに,データの所在を知ることもあります.ただし,多くはアンケートのように意図をもってデータを収集できないために,高度な分析力が要求されます).私はかつては前者,最近では後者が主ですが,現実にはこの両者の間をを行ったり来たりしながら,研究計画を定めています.程度の差はあるにせよ,実証研究をするには,理論にデータを寄せていく,もしくはデータを理論に寄せていくことが求められます.

    データを提供してもらえる調査対象先の企業と出会うことは,研究者の実力のひとつです.私たちの学術的関心に,(コストをかけてまで)付き合ってくれる暇な会社などどこにもないのです.したがって,実証調査をするには,その企業の課題を解決する形に私たちの関心を修正した上で,コストをかける以上のメリットが企業側にもあることを訴求できなければなりません.これはコンサルティング活動に相当し,その組織の長(会社の社長や部長等)からの了解を得ることが必要となります(そうでなければ,良いデータは取れません).私が博士課程で行った研究は,SI企業の従業員を対象にした調査でしたが,調査対象先をさらに広げようと,その分析結果を営業資料(?)にして,幾つかのSI企業を回っていました.ある大手企業に調査を持ち掛けた際,担当者の一人がMBAプログラムに属していて,君の研究は面白いというのでその人が主催する研究チームに入れてもらったのが,2度目の実証研究となるフランチャイズチェーンの調査を始めることになったきっかけです.社長以下役員全員の前で,調査提案をしたのを覚えています.次にやった研究は,ある企業の部長さんの研究指導をしていたことがご縁となり,その方を口説いて調査をさせてもらいました.その後,製造業での調査をやりましたが,これは何の縁だったかもはや忘れてしまいましたね.その後にやった自動車販売ディーラーの調査は,かつて指導していた学生が就職後に調査担当部門の所属になり,相談を受けたように記憶しています.これも,社長以下全国の営業責任者全員の前で研究報告をしました.最近行ったアパレル企業の店舗調査も,社長さんと何度も深夜まで議論しながら,調査案を具体化させていきました.

    「縁」は大事ですが,ぼーっとしていて掴めるものでもありません.私が研究者駆け出しの頃は,石川県の片田舎に住んでいましたから,営業のための交通費がバカになりませんでした(当時は自分で立ち上げたベンチャーの社長もしていましたが,交通費は基本的に自腹でした).商談の成功確率を上げるため,会社を訪問する際はその会社や業界の情報を,新聞・雑誌・業界誌・あるいは社長のインタビューや自伝まで事前に徹底的に調べあげました(この経験のお陰か,今では『調べ魔』と異名をもらうまでになりました).当時は飛行機をよく使いましたので,訪問先のアニュアルレポートや何やらの集めた資料を機内に持ち込み,経営数字を頭に叩き込んだら,空港のごみ箱に捨てて(重いので)現地に向かうといったことを繰り返していました.そのおかげか,「うちのことをよく調べたね」「こんな情報,どこから入手したの?」と言われるようになり,具体的な話に結び付いていきました.業界動向を探るために,シンポジウムや○○フェア(東京ビックサイトで開催されているようなやつ)もよく行きましたね.このように研究者は皆,血のにじむような努力をして「縁」を探しているのです.

    若手の学生さんをみていると,せっかく企業の方とお会いする機会があるというのに,まともな準備もしてこない.「いつでもうちに来ていいよ」と言われておきながら,その後コンタクトもとらない(研究計画が出来ていないので,コンタクトが取れない).論文を書く頃になって慌ててメールを送ったところ,「そんな人と会ったかなぁ」ということになり,返事も来ない.せっかくのチャンスを活かすことがまったく出来ていません.本当に研究したいのかと疑いたくもなります.そういう意味では,人と会うガッツもビジネスセンスも兼ね備えた社会人に,私は大きな期待を寄せています.何しろ,所属する部署の人や仕事を通じてデータがほぼ確実に入手できるわけですから,実証研究をする上では十分すぎるアピールポイントです.企業からデータが入手できそうにない人は,図書館の書庫を巡ってみてください.信じられないような詳細なデータ集が埃をかぶって眠っていることがあります.データ分析の実力さえあれば,特許などの書誌情報やネット上に転がっている情報だって十分に実証研究の基礎データになり得ます.こうしたデータを使った研究が学術界で十分に通用することは,私の研究業績をみれば明らかです(たとえば,論文4論文5論文6など)

    だらだらと書き綴ってきましたが,私も研究の素人である受験生に,完璧な研究計画書が書けるとは思っていません.しかし,「日本とアニメと経営学が好きなので,留学したい」という動機だけでは研究が遂行できないことも事実で,だからこそ研究計画書で準備状況を判断したいのです.特に博士課程への進学を考えている人は,「この問題を解決しなければ,人生が一歩も前に進まない」という本質的な問いや経験をもっていることが,後の学者としての成功を決定づけるように思います.その問いがあなたにとってどれほど重要であるかは,研究計画書を読めばすぐわかります."Chance favors the prepared mind"(チャンスは備えあるところに訪れる)という言葉があります.きちんと準備して,私を驚かすような研究計画書を送ってきてください.そうすれば,チャンスは自然に訪れるはずです.